Tripping with the G-SYSTEM - SUGIZO - Part 2

2009年10月 -
「なによりこのクオリティで、このサイズに収まるのがすばらしいです。」

このコンサートの後、正式なメンバーとしてX JAPANへの加入が決まり、さらに海外公演などのスケジュールが過密化。同時に自身のソロである「NEXT PHASE OF COSMIC DANCE」も東京に引き続き台湾公演が決まり、G-SYSTEMを使った可搬性に優れたシステムが本格的に必須となった。

台湾公演の前哨戦として12月22日にファンクラブのイベント、「PREMIER OF COSMIC DANCE II」が決定しており、それまでにシステム構築するにあたり、SUGIZO氏から出された要望は下記の通りだった。

・全16曲(予定)のバンクを保存
・足元はボリューム・ペダル、ワーミー、ワウ、MIDIフットコントローラーのみにしたい
・歪みは3種類最低必要。アンプの歪みもインテグレートしたい
・アンプは台湾公演でのレンタルを想定。Mesa Boogie社のTriple Rectifierを使用することが濃厚。

ローディーを担当する株式会社チームアクティブの担当者、辻忠行氏、大月邦章氏を含んだ綿密な打ち合わせを数回経たのち、11月に都内のスタジオにて仮組みを行った。

まず着手したのはアンプのチャンネル・スイッチング。Triple RectifierにG-SYSTEMのリレースイッチを接続し、1chはほんの少しクランチにしたクリーン・サウンド、2chをクランチに設定。ソロ用にはアンプのSoloボリュームが機能するように設定し、ソロ時のレベルはアンプ側で制御する。また、ソロ時には後述するループ2のディストーションをプラスする設定で、クリーン、ドライ、ソロ、とそれぞれリレー設定をプリセットしていく。

SUGIZO氏のソロ・サウンドの要とも言えるProvidence製Ring Modulatorは、BossのワウペダルとDigitechのWhammy 2の後に直列に接続した状態でループ1に。そしてSUGIZO氏より指定のあった、Black Star製のHT-DISTX DX-1をループ2に組み込み、ソロ時のディストーションサウンドにコシを出せるように設定した。

ソロのメイン・ディレイにはなるべく2290に近い音、ということでG-SYSTEM搭載のディレイの中では比較的ファットな音色が出せるLo-Fi Delayをチョイス。Mixレベルを調整しながら、しばしソロ・サウンドをチェックしていただいた。その過程で微妙なニュアンスを伝えていただき、抜けを確保するためにHi-cutは20kHzに、Lo-cutは50Hzにしてディレイ・サウンドが「とっちらからない」ようにそれぞれ設定した。

フィードバック量に関しては非常に繊細な調整が続いたが、最終的にはSUGIZO氏の指示で、自身の生まれ年である1969年にしたがい、69%に設定した。

「ソロ時のディレイに関してはこのサウンドでOKです。他のバンクのすべてのソロ・プリセットにコピーしてください。」

SUGIZO氏からGOサインが出た。

符点八分のトリッキーなフレーズ用のディレイはLo-FiからSingle Delayに変更するように指示が出た。微妙なディレイ・サウンドの音色を見事に聞き分けたSUGIZO氏には本当に脱帽した。

また、ダブ的に使用するSpace Echo、BossのRE-20をループ3に、破壊的なモジュレーション・ディレイと、フランジャー用には自身で3台所有しているMaxonのモジュレーション・ディレイペダル、PDM-1(#2とラベルされたもの)をループ4に組み込んだ。このペダルで出る音は残念ながらG-SYSTEMでは再現できなかった。

「単なるフロアマルチ・エフェクターではなく、ループ・スイッチャーでもある - これは僕のようなギタリストにとっては本当にメリットがあります。このような飛び道具的に使用する音色についてもすんなりインテグレートできるのですから。どんどん音色を増やしていけるマルチエフェクターみたいなものですよね。」

「モダンなデザインのG-SYSTEMの横に、PDMのようなヴィンテージ・ルックスのペダルがいるのが面白いですね。」

その後、Godinのガットギターとバイオリンを接続し、アンプのクリーンチャンネルを介した音で使用に耐えるかチェックしていただいた。やはりアンプのプリアンプを通っているので、若干歪っぽい。こちらは実際にゲネリハが始まってからPAエンジニアを含めて相談し、最終判断することになった。

この日は朝方までバンクのプログラミングは続けたものの、仮セットアップまで落とし込むに留まった
2009年12月14日。

いよいよ3日間のゲネリハがスタート。仮組みをしたG-SYSTEMセットアップも、バンドアンサンブルの中でさらに調整が詰められていった。

曲間、曲中のプリセット・コントロールはステージ袖の大月氏が行い、SUGIZO氏の足元にはリアルタイムでコントロールするワウ、ワーミー、そしてボリューム・ペダル。そしてSUGIZO氏自身でコントロールすることも想定してRJM社のMIDIフットコントローラー、MasterMindを右足側に配置した。

演奏中も細かな調整の指示を出すSUGIZO氏。最終的にオーディエンスに届ける楽曲のクオリティに目を配りながら、自らのギターサウンドも磨き上げていくその姿は、ストイックで、緊張感に満ち溢れている。

曲中のプリセット切り替えを行いながらもその指示通りにパラメータを調整していくローディの大月氏。次の曲のギターやバイオリンも用意しながらの作業なので目まぐるしい。

そうして少しずつ全てがシンクロナイズしていき、SUGIZO氏の描いたビジュアルが楽曲の放つサウンドによってどんどん具象化していくのが傍目から見てて最高にエキサイティングだった。

SUGIZO氏にとって「ギターサウンド」は単なる「ツール」ではなく、どちらかというと「肉声」に近い。頭の中に広がるサウンドスケープが、音波となって思い通りに「発声」されなければならないのだ。シンガーがボイストレーニングをするのと同じ感覚で、SUGIZO氏の「ギターサウンド」は磨かれ、構築されていく。

ところがここで歪みの音質に問題が出た。新曲「MESSIAH」でSUGIZO氏が作り上げたヘビーなリフに使用されている「ザクザク」としたディストーション・サウンドが、どうにもしっくりこないというのだ。BlackStar社製のディストーションを調整してみるが、コシが出るのと引き換えに「スピード感」が失われてしまう。

他のメンバーが休憩に入るとすぐにSUGIZO氏自身によるアンプのセッティングが始まった。2chのクランチ・チャンネルに様々なペダルを足して試してみるが、やはり解消できず、SUGIZO氏のアイデアでTriple RectifierのSoloボリューム機能を使わず、未使用だった3chを使用することになった。

他のプリセットなどとの絡みで、レベルマッチングが干渉してしまうため、G-SYSTEMのBoostを機能させることに。Boost Maxで5dBのヘッドルームを作り、リフの質感をザクザクさせたいヘビー・サウンドは全てTriple Rectifierの3chを使用することになった。他の曲の分のプリセットもそれに伴いリレースイッチをプログラムしなおす。そしてソロ時のプリセットにはG-SYSTEMのBoostをONに設定し、元々アンプのSoloボリュームでコントロールしていた出力アップを確保した。

ここで、ソロ以外のプリセット使用時に5dB分G-SYSTEMからのシグナルが落ち、アンプの歪み方が変化してしまう部分を補正するのにSUGIZO氏が取り出したのは、FAR EAST ELECTRIC製の謎のアイテム、「ぷりっぷり」。5cmほどの大きさのスチール製の樽のような形に、シールドを接続するジャックが表裏に2個付いている。これをG-SYSTEMのInsert SendからTriple RectifierのInput手前に接続してみた。

驚くべきことに、5dBものシグナルレスをものの見事に補正、アンプがフルで鳴っているようなハリのある音質が得られた。

SUGIZO氏いわく、

「シールドを変えて得られる音のハリとはまた違った感触ですよね。これ、すごい重宝しているんですよ。最近とても注目している工房、FAR EAST ELECTRIC製なんですが、本当に良く出来ている。」

このギタリストの耳の良さ、そして何よりも「ギターサウンド」に対する飽くなき探究心に、本当に感嘆させられた瞬間だった。

「ギタリストにとって歪みは自分の紋章(エンブレム)のようなもの。こだわって当然だし、いつまでも追い求めるべきギターサウンドの一つだと考えています。G-SYSTEMが歪みを搭載せず、その自由をユーザーに与える、というのは本当にギタリストのツボを押さえた人の考えたことだと思います。」

3日目には全ての曲分の設定が完了し、大月氏のプリセット・コントロール上どうしても無理がある箇所について、G-SYSTEMのCompressorセクションのゲインを最小に設定することでミュートと同じ状態を作り上げるという荒業を駆使するまでにいたっていた。

「ガットギターとバイオリンについては今回は時間もないのでG-SYSTEMを使うことは見送りますが、まだ諦めてはいません。ソフトウェア上でルーティングが設定できるようになり、プリアンプを通らずに出力できるような改善がもたらされることを望んでいます。そうすれば本当にこのシステムで一通り僕のやりたいことが網羅できるので。」

「それでもだいぶサイズダウンできました。このクオリティで、このサイズに収まるのが本当にすばらしいです。」

調整の嵐を物語るG-SYSTEMのボタンについた数々の指紋を、自らセームで拭き取りながらSUGIZO氏は語ってくれた。

最終的にアッセンブルされたSUGIZO氏のニュー・システムは下記の図の通りである。


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Part 3に続く・・・


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